今年の3冊(2014)

 今年ももうすぐ終わりです。とりあえず年内予定の原稿などは書き終え、休みに入ろうと思ったら校正ゲラが届き、それを終えたら今度はゼミ生から卒論の草稿が届くなど、なかなか完全オフモードには入らせてもらえません(苦笑)。

 というわけで、今年(2014年)読んだ本の中から、特に印象に残った三冊をピックアップして紹介します。

 「日本はなぜ公務員数が少ないのか」は前から気になっていた論点。それに対して、福祉国家論を含む幅広い視点からアプローチしている点が印象に残りました。タイトルもとてもいいと思います。

 ②

先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)

先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)

 
 この本を読んで韓国の面白さにあらためて気づき、ゼミの韓国からの留学生といろいろと盛り上がりました。

 ③

二〇世紀の歴史 (岩波新書)

二〇世紀の歴史 (岩波新書)

 20世紀の歴史を新書でまとめるというのは大変だと思うのですが、一定の視点から見事に描かれているという感じで、大げさではなく感動しました。
 
 そのほかにもいろいろと感銘を受けた本は多いのですが、3冊というのが区切りがいいので、このあたりで。3冊中2冊が新書ですが、今年は全体的に新書に良い本が多かったという印象ですね。

 

2014ゼミ終了

今年もあっという間に学部の方のゼミが終了しました。我が大学では2学期制になってから、12月にはゼミが終わってしまうのです。ただ4年生に対する卒論指導はここからが本番ですので、個別指導に移るという感じですね。

 秋学期は、3年生が、自らの研究テーマにかかわる文献を選んできて、それをみんなで読むことにしています。今年度は、以下のような文献をゼミで扱ってきました。

 

現代日本農業の政策過程 (総合研究 現代日本経済分析 3)

現代日本農業の政策過程 (総合研究 現代日本経済分析 3)

市町村合併による防災力空洞化: 東日本大震災で露呈した弊害

市町村合併による防災力空洞化: 東日本大震災で露呈した弊害

日本財政 転換の指針 (岩波新書)

日本財政 転換の指針 (岩波新書)

 なお、大学院のゼミの方は1月いっぱいまであります。今学期は以下の文献を読んでいます。最近僕がちょっと興味あるテーマの一つ。今ちょうど真ん中あたりで、面白くなってきたところです。

 

Democracy And Expertise: Reorienting Policy Inquiry

Democracy And Expertise: Reorienting Policy Inquiry

 

2014ゼミ開始

またしばらく書くのをさぼっているうちに、2014年度も始まってしまいました。今は第一週が一回り終わったところで、新しい人たちとの顔合わせが多いので、やや緊張して疲れる時期ではあります。

 そんなわけで、春学期に扱うゼミのテキストも決定。まず学部ゼミでは、以下の文献を読んでいくことにしました。いずれも、現代政治上のホットな論点を扱いながら、思考法や分析方法が学べるようなものということで僕がチョイスした中から、学生が選んだものです。

(1)

(2)
日本の財政 (中公新書)

日本の財政 (中公新書)

(3)(4)以下の本の、仁平さんの「社会保障」の章と、貴戸さんの「教育」の章。
平成史【増補新版】 (河出ブックス)

平成史【増補新版】 (河出ブックス)

 そして大学院の方は、最近またガヴァナンス論が注目されているようなので、とりあえず下記の本を読んでみることにしました。春学期を通じて1冊を通読します。

Interactive Governance: Advancing the Paradigm

Interactive Governance: Advancing the Paradigm

  • 作者: Jacob Torfing,B. Guy Peters,Jon Pierre,Eva Sorensen
  • 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
  • 発売日: 2012/03/21
  • メディア: ハードカバー
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 大学院では、読んでみたいが、なかなか一人では読む時間が取れない本の中から、大学院生と合意のとれた本を読む、ということが多いですね。今回はまさにそれです。

ゼミ終了

 1月最終週は、卒論の提出の週でもあります。政治学専攻では卒論は任意ですが、今年も数名のゼミ生が無事に卒論を提出しました。その後、3年生を交えていわゆる追いコンをしました。卒論が終わったばかりの4年生はもちろん、3年生もまた4日間にわたる集中講義が終わったばかりだったようで、その解放感からかいつも以上に盛り上がった飲み会となりました。

 ここの学生は卒論にも「謝辞」を書くことが恒例のようで、結構こそばゆいことを書いてくるのですが(苦笑)、目立ったのは「ゼミで多種多様な本を読んだことが、大変ためになりました」というもの。まあ、僕のゼミの特徴をちゃんと評価してくれてるということで、うれしいですね。

 秋学期もいろいろな本をゼミでやりました。秋学期は、3年生が自分のテーマとの関連で読むべき本を一人一冊ずつ(僕と相談の上で)選び、それを毎週検討していくのが恒例です。扱った本を、以下にすべて列記します(対象となるのは、その中の一部の章である場合が多いです)。

労働市場改革がテーマのMくん。

「最後の社会主義国」日本の苦闘

「最後の社会主義国」日本の苦闘

・利益誘導政治がテーマのTくん。

自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾

自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾

・地方政治がテーマのYくん。

地方政府の民主主義 -- 財政資源の制約と地方政府の政策選択

地方政府の民主主義 -- 財政資源の制約と地方政府の政策選択

・マスメディアと政治がテーマのJさん。

ジャーナリズムと権力 (SEKAISHISO SEMINAR)

ジャーナリズムと権力 (SEKAISHISO SEMINAR)

福祉国家がテーマのKさん。

比較福祉政治―制度転換のアクターと戦略 (比較政治叢書)

比較福祉政治―制度転換のアクターと戦略 (比較政治叢書)

・中国政治がテーマのSくん。

現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

・社会的包摂がテーマのYさん。

・日本の安全保障がテーマのAくん

自衛隊―変容のゆくえ (岩波新書)

自衛隊―変容のゆくえ (岩波新書)

・ネットと政治がテーマのYさん。

・地域政策がテーマのSさん。

また、11月の一橋大学との合同ゼミでは、以下の文献を共通テキストにしたうえでディベートしました。

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

生活保障 排除しない社会へ (岩波新書)

こうして並べてみると、ほんとに多種多様な本をゼミでやっていますね(苦笑)。

あと、ついでですが、院ゼミも先日終わりましたが、秋学期は次の本を丸ごと読んでいました。制度論の基本を押さえつつ、野心的にその統合・発展を目指した本で、想像以上に面白かったです。なんというか、実にイギリスの政治学者の議論っぽい感じがしました。

Why Institutions Matter: The New Institutionalism in Political Science (Political Analysis)

Why Institutions Matter: The New Institutionalism in Political Science (Political Analysis)

  

年末年始の収穫

 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。年末年始は、例年通り実家に帰省していまして、しっかり体重を増やして戻ってきました。そして仕事始めだった先週からは、卒論指導や博士論文審査(しかも英語)などが集中的に入り、さっそく時間の余裕のない状態になっております。

 さて、今年の予定というか目標というか願望ですが、こんな感じ。

 ・いま進行中の社会民主主義政党の比較研究は最後の部分(ドイツSPD)に差し掛かっていますが、これを何とか夏前までに一本くらいは形にしたい。

 ・夏には、ある共著企画の執筆に専念する。

 ・それが終わったら、上記の比較研究を取りまとめるような作業に入りたい。

 …といったところ。このほかにも、一つ具体的な共同研究の企画が発進しつつあるので、それがうまく滑り出せばそれもやることになります。また、さらにもう一つ、発進させませんかと言われている企画もあるのですが、そこまで手が回るでしょうか。

 あと、迫りつつある研究室の引っ越し(耐震補強のため)と、確実にやってくる自宅の引っ越し(いま住んでるところを出なければならないため)に備えて、荷物の整理も着実に進めなければ…(これが一番気が重い)。

 さて、年末年始の休み中に読んだ下記の本は、僕的には大収穫でした。我が意を得たりという感じ。来年度の学部ゼミのテキストに是非採用したいところです。

 

 あと、これは政治学には関係ないですが、(いま住んでいるところでは上映されていないので)帰省先の映画館で見に行ったこの映画もなかなか良かったです。

 
 

今年の3冊

 ずいぶんと書き込みをさぼってしまいました。特に何かがあったわけではなく、元気にしております。

 時期的に既に今年の回顧モードに入っているわけですが、今年は例年に比べると、学部のゼミに力を入れた1年だったような気もします。ゼミ生の要望にこたえて、初めてゼミ合宿(湘南・鎌倉)もしましたし、例年一橋大学と行っている合同ゼミも、充実したものでした。全体的にゼミ生との間で活発なコミュニケーションができた1年だったでしょうか。

 研究面では、ちょっとドイツSPDに手を伸ばし始めましたが、やや苦労している最中、といったところです。これは来年に何とか形にできればいいな、という状態。また、イギリス労働党福祉国家についての文章もいくつか書きました。こちらは、春ころには出版されていくのではないでしょうか。

 このブログでは、僕がゼミで扱ったり紹介した本を取り上げることをメインにしているのですが、秋学期の分はすっかりすっとばしてしまいました。その辺はおいおい紹介していくとして、今日はとりあえず、僕が今年読んだ本の中から、とくに興味深いと思った3冊を挙げておきます。

 (1)今年は税金について考える機会が多かった(消費税増税もありましたし)流れの中で、とても勉強になった1冊。こういう根本的な思考が求められているのだと再認識させられました。

私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)

私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)

 (2)いくつかブログ上で話題になっていた1冊。評判通り、とてもおもしろかったです。

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

 (3)こちらは新書代表。今年は興味深い新書が多かったという印象ですが、その中でもとくに良い本と思いました。

 今日で仕事納めにしようかと思いつつ、校正ゲラが今日になって届いたので、まだ納められなさそうな感じです。
 
 

いろいろあった7月

 いつの間にか、もう7月も最終日です。例年ですと、「夏休みがあと1ヶ月しかない!」と慌てだす時期なのですが、我が大学は今年度から2学期制になったため、夏休みは9月末日まで。ここからが本番という感じです。

 7月はいろいろありました。上旬は、授業の終盤&テストなど。出張なども重なり、わりと忙しい日々を送っていたところ、

 中旬になってダウン。お医者さんからは、「軽い肺炎になっている」との診断を受けてしまい、しばらく自宅で療養。まあ、1週間ほどで回復しましたが、やはり無理はできないなあ、と痛感することに。今年は特に6月から忙しい日々が続いていて疲れがたまっていたところに、7月上旬にかなり暑かったので、それで消耗してしまったのはないかと自己判断しております。

 ということで、7月下旬はあまり無理しないように過ごそうということで、出張などはキャンセルし、研究室を中心に穏やかに過ごしていました。しかしけがの功名と言うべきか、そのおかげでじっくりと今の研究テーマについて本を読んだり考えたりすることができ、結構充実していました。やはり、研究者にとって、落ち着いて考えることのできる時間というのは、もっとも重要なリソースです。

 さて、この間には参院選もありました。今年もゼミ恒例の「議席数予想コンテスト」を実施しました。今回は、なかなかいい予想ができたと思ったのですが、上を行くゼミ生がおり、1位になれず。ちょっと自民党を多く予想(70議席)しすぎました。でもまあ、20人近くの中で3位にはなりましたから、一応教員としての面目は保ったかな?という感じです(苦笑)。

 また、ちょっと前になってしまいますが、春学期最後のゼミで、僕が書評したのは以下の二冊でした。

 (1)以前紹介したコリン・ヘイの『政治はなぜ嫌われるのか』とセットで読むとよさげな1冊。政治に失望はつきものなのだから、それに爽快感や万能薬を求めてはいけないのだ(それを求めると、待っているのはより深い失望である)という本書の根幹となる議論は、大変示唆的です。しかし、ヘイといい本書の著者といい、議会や政府領域外での政治参加をあまり積極的に評価しない面があるのは、イギリスの人だからなのでしょうか。ともかく、来年度に向けてのテキスト候補になるでしょう。

 (2)EUについてのリアルな評価、という感じがします。特に、「正統性」についての議論は、初出の段階でも読んだことのあるものでしたが、あらためて読んでみて、未だ色あせないといいますか、まさに今日的かつ本質的問題である点で、重要な課題が提起されていると思いました。

統合の終焉――EUの実像と論理

統合の終焉――EUの実像と論理