共著の集合行為問題

 先日(と言ってももう一月近く前ですが)、ある同業者の方が「共著本はなるべく参加したくない仕事の一つ」とおっしゃっていました。理由は、「たいていの場合出版が遅れて、その間自分の文章が氷づけにされてしまうから」だとか。

 僕は「参加したくない仕事」とは思いませんが(むしろ前向き)、確かにこれまでの経験から言っても、予定より出版が遅れる傾向がある、というか、当初の予定通り共著本が出たことの方が珍しいというのはあります。

 で、共著本が当初の予定通り出た時には、どんな条件がそろっていたのだろうか、なんてことを考えてみたりしたんです。

 たとえば、①編者の権威や権限が強く、締め切り破りなどへのサンクション(掲載されないとか、叱られるとか)が明確に予想される場合、②その共著プロジェクトの目指す目標が、執筆者間で強く共有されている場合、③執筆者間の関係はあまり親密すぎず、しかしその関係は今後も持続する場合(繰り返しゲーム?)、なんかが思いつくんですが、こう考えると共著っていうのは、執筆者間の集合行為問題を抱えているんだなあ、と。

 なぜこんなことを考えたりしているか、と言いますと、この9月が締め切りになっている某原稿は、とある共著企画のものなんですが、僕は編者の一人でもあるんですよね(しかも初めて)。自分の原稿は最終段階に入ってきていて、少なくとも「出せない」という事態は回避されそうなんですが、こうなってくると今度は、他の方々の原稿が無事集まるかが気になってきているわけです。

 でも、②はともかく、①③あたりの条件は心許ない。どうか首尾よく集まりますように…。