ジンクス破れる

 というわけで、新学期が始まって3週間が過ぎようとしています。既に疲労が…。

 とりわけ、まだ残暑きびしい折にもかかわらず、予定通りに今週初めから学内のエアコンが切られたため、教員・学生ともに阿鼻叫喚。いや〜、汗だくで講義は辛かったです。最後の20分は頭も舌も回らない状態でした。

 さて、担当している「政治思想」の講義では、今年も夏休みレポートを採点。例年よく読まれる『君主論』や『社会契約論』を抑えて、今年もっとも読まれたのは、なんと(?)、『共産党宣言』でした。
 
 なぜ『共産党宣言』が?ということに関して、僕は仮説を三つ持っております。

 ①近年の格差の拡大やワーキング・プアの増大に際し、マルクス共産主義への関心が高まっている。
 ②他の授業で扱われた。
 ③『共産党宣言』に関しては、さまざまな「訳」が、ネット上で公開されており、本を買わずして読むことができる。

 でも、どうやら②はなさそうです。ちなみに③については、採点中にどうも不自然なレポートがあり、検索してみて発見しました(それを部分的にコピペしただけのレポートがあったということです)。

 ところで、この夏休みレポートに関しては、提出数の1割程度を優秀レポート、さらにその中でも特に優れたものを「最優秀レポート」として、書いた人の氏名を講義で発表しています(この時が1年で一番盛り上がる)。

 これを毎年(今年で10回目くらい)やっているのですが、実はあるジンクスがあります。というのは、「政治学専攻の希望者は、最優秀レポートを取ったことがない」というジンクスです(ちなみに、我が学部で専攻に分かれるのは3年次からであり、1年生中心のこの講義では、だれがどの専攻を希望しているかは、採点時点では僕にはわからない)。

 政治学の基礎講義なのに、政治学専攻希望者が最優秀を取ったことがないというのは、なかなか悲しい事態(苦笑)だったのですが、今年ついに、最優秀レポートを書いた人が、政治学専攻の希望者であることが判明。ついにジンクスは破られました。感無量です(笑)。

 なお、来年度からの2学期制導入に伴い、この政治思想の講義も学期完結型(=夏休みを挟まない)に変わります。というわけで、この恒例の「夏休みレポート」をひとまず今年で最後。最後の年についにジンクスが破られるあたりが、ドラマティックでした。

 さて、ゼミの方も本格化し、今学期に扱うテキストなども決まりつつありますが、それはまた次回、ここで紹介しようと思います。

8.31

 8月31日。わが大学では夏休み最終日。ただでさえ切ないのに(苦笑)、政治はアレだし、野球はコレだし。某先生の口癖ではないですが、「何か面白い話ない?」と学生とかに聞いて回りたい気分です。その意味では、授業再開は良いタイミングなのかもしれませんねえ(なんだかんだ言っていますが、授業など学生との交流が増えるのは、嫌ではない)。

 今年の夏休みは、特に8月は、会議と雑務にかなりの時間を取られた上に、1週間に伸びた夏季一斉休業期間(研究室来てもエアコンつかない)は、スパッと帰省に使ってしまったので、研究に仕えた時間は例年に比べても少なく、進捗状況がどうなんだろう?という感じではあります。

 ただ、ようやく最終週の今週になって、かなりまとまって研究時間を取ることができたので、少し盛り返した感はあります。9月に予定されている研究会報告に向けては少し目処が立った(方向性は固まってきた)一方、もう一本秋に執筆予定の論文については、ストーリーは固まってきたけど、資料の山に追われていて、若干苦労しているところ。

 実は夏前に、もう一つ秋に締め切りの来るお仕事のお話をいただいていたにもかかわらず、諸般の事情からお断りせざるを得なかったのですが、もしお引き受けしていたら、今ころ大ピンチになっているところでした。

 ただ、この夏は、例年に比べて、新刊を中心に多くの本を読むことができたような気がします。そのうちのいくつかは、2学期に、また恒例のゼミ書評で紹介していこうと思いますが、特に興味深かった本をいくつか挙げておこうと思います。

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

 著者の水島先生からいただいた本。オランダに関してですが、いろいろと想像力を働かせると、他の国(たとえば日本)などに関しても、いろいろな示唆を得られて面白かったです。
政党支配の終焉―カリスマなき指導者の時代 (サピエンティア)

政党支配の終焉―カリスマなき指導者の時代 (サピエンティア)

 こちらはイタリア。この本を読んだ後、某イタリア研究者と話す機会があったのですが、やはり現在のイタリア政治を見るうえでとても良い本とのこと。また、村上先生が翻訳される本はいつも興味深い気がします。 小堀先生からいただきました。現在の日本でモデルにされているイギリスの制度自体が、現在揺らいでいるという内容。イギリス政治研究者が日本において伝えていかなければならないことに、きちんと取り組まれているという点で、感銘を受けます。

 あと、小説は宮部みゆきの昔のものを何冊か。新しいものでは、森見登美彦の↓がよかったです。
 

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

もう折り返し

 暑い日が続きます。もう、ビールとアイスがやめられない状態に…。オリンピックも始まりましたが、競泳ばかり見てしまうのは、何となく涼しげに思えるからですかね。

 夏休み中ですが、別に休んではおらず(強調)、授業期間中にはできない、さまざまなことに勤しんでおります。秋に締め切り予定の論文のための準備(最近進めている社民政党比較分析の一部)を基本としつつ、やはり秋に予定されている研究会報告(イギリス労働党について)のための勉強もぼちぼちと。研究面では、しばらくはこの2本立てで。

 でも今年の夏は、この時期になってもいろいろと会議が多くて、なかなか研究に専念できない状況ではあります。来年度から2学期制に変わるので、そのためのカリキュラムの再編など。

 そのような中、7月末には、研究会のために京都へ。下の本についての書評報告を、著者の所属である○命館大学の研究会で行ってきました。

 

福祉国家再編の政治学的分析―オーストラリアを事例として

福祉国家再編の政治学的分析―オーストラリアを事例として

 著者は、僕の大学院の後輩にあたる方でもあり(ただ在籍期間は重なっていません)、そのこともあって僕に依頼されたようです。いろいろコメントさせていただきましたが、著者のエネルギーを感じさせる本です。最近、若い方々の出版が続いておりますが、その中でも特に刺激的な1冊ではないでしょうか。

 著者からは、「丁寧に読んでもらってありがとうございました」と言われましたが、その評価は僕にとってもうれしい。書評やコメンテイターなどをする時、ともかく「丁寧に読むこと」を心がけているので、それが報われた感じがします。

 また、研究会では、久しぶりにお会いした方(この大学には結構知り合いが多いので)や、著作は読んでいて知っているけれども初めてお会いした方など、いろいろな方とお話できたこともよかったです。

 さて、9月1日に2学期が始まる我が大学では、夏休みはもう折り返し地点。さらに研究を進めたいところですが、8月が結構、他のことに時間を取られたりするので、さてどうなるでしょうか(とか客観的に言っている場合ではないのだけど)。

いろいろホッとする

 ここのところ、いろいろホッとすることが続いています。

①健康診断の結果が届いた

 一月前に受けた健康診断の結果が返ってきました。受けた項目はとりあえずすべて異常なしで、ホッとしました。しかし、結果通知の封筒を開けるときの緊張感(と異常なしと見たときの安堵感)が年々高まっていくところに、歳をとりつつあることを感じさせられます(苦笑)。

②学会の討論者が終わった

 もはや10日ほど前になりますが、某学会で司会者&討論者を務めてきました。セッションのテーマは「多民族国家と連邦制」。まあ、あまり僕の専門ではないということで実のあるコメントができるかどうか不安だったのですが、ペーパーに触発される形でなんとかクリア。「連邦制」を比較政治制度論に捉える視点を提供する形での一定の貢献はできたかと思いますが、「多民族」側に立った論点を期待されたオーディエンスの方には、少し物足らなかったかもしれないという反省点も。

 とはいえ、これまで縁のなかった連邦制(まあ、僕の対象国はウェストミンスター型国家ですし・笑)というテーマが、なかなか興味深い論点の宝庫であることがわかったのは収穫でした。このテーマで少し突っ込んでみたい気もしますが、僕の現状のテーマからすると飛躍しすぎというか、その前に他にやるべきことがいろいろあるだろうという感じですかね(苦笑)。

 ・・・ちなみに、討論者としての準備にばかり集中しすぎて、司会者としての準備がおろそかであったことは内緒です。

 ③夏休みに入った

 本学は3学期制ですので、1学期が6月いっぱいで終わり。とりあえず夏休み(ただ、学部ゼミが終わりきらなかったので、明日もう1回だけ補講をやる)。
 他の大学に対して優越感を持つ唯一の時期ですが、しかし!これも今年が最後です。なぜなら、来年度からはついに本学も、他大学並みの「2学期制」に変わるからです。まあ、正確に言うと、2学期制とはいえ「他大学並みの」という点には留保をつけるべきなのですが。これについてはまた後日。

火曜日はいつも雨

 学部ゼミを火曜日にやっているのですが、今年度はこれまでのところ雨が降る率が半端ではない。いつも傘を持ってゼミ室に行っているような気がします。大体、ゼミ初回からして激しい雷雨の中だったし、昨日に至っては台風。誰か雨男/女がいるのか?
 さて、ゼミということで、恒例の書評の日。僕がゼミ生に紹介したのは以下の2冊でした。

 ①原発金融危機対応などもあって、「専門家」と政治との関係は最近とみに話題となるテーマ。もちろん、この企画が進行中のころは、それらはまだ起きていなかったわけで、非常に先見性がある企画だったのではないかと。しかも、専門家自体を中立的ではなくそれ自体選好を持ったアクターとしてとらえる視点なども、非常にタイムリー。企画に時代が追いついたという感じでしょうか。

専門性の政治学―デモクラシーとの相克と和解 (MINERVA比較政治学叢書)

専門性の政治学―デモクラシーとの相克と和解 (MINERVA比較政治学叢書)

 ②政治の両義性というか不安定性というか、何かこう「すっきりしない」ところこそ政治の本質なのだ、ということは、僕もよく講義などで伝えようとして苦心しているところなのですが、本書ではその辺りが巧みに表現されていると思いました。

政治学 (ヒューマニティーズ)

政治学 (ヒューマニティーズ)

 …で、ではゼミ生はどんな本を書評しているのかを、たまには少し紹介してみようと思います。今回、ゼミ生が取り上げた本の中で言うと、たとえば次の2冊なんかはよく読まれており、何度もゼミ書評に登場しています。

市民の政治学―討議デモクラシーとは何か (岩波新書)

市民の政治学―討議デモクラシーとは何か (岩波新書)

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

 また、今回は以下の本を取り上げたゼミ生もいました。これなんかは、僕も学部生のころに取り上げたことがある本で、なんというか、世代を越えて読み継がれているなあ〜、と。

自由主義の再検討 (岩波新書)

自由主義の再検討 (岩波新書)

 さて、今週末は某学会。討論者なのでそろそろ準備を本格化させねば。夏休みも近づいているし、徐々に講義中心モードから研究中心モードへと切り替わる時期です。

解放感

 …といっても、仕事から解放されているわけではなく(笑)。授業が本格化しているので、だいぶそれにからめとられている今日この頃。

 今日は朝から健康診断がありまして、それが終わったということで、妙な解放感を感じる一日。歳とともに検査項目が増えていくのがなんか悲しいですが、とりあえず今年から増えた「腹囲測定」については、BMIが20未満ということで回避することに成功し、なんか達成感。この日に合わせて調整した甲斐がありました(笑)。でも、すべての結果が今日のうちに出るわけでないので、まだちょっと緊張。

 昨日はゼミ。今年はまだちょっとゼミ生の発言が少ないのですが、そこは粘り強く我慢することが肝心。まあ、僕も学生のころは積極的に発言する方ではなかったので、気持ちは理解できます。

 恒例のゼミ書評では、以下の2冊を紹介しました。

①「政治主導」という問題を考えるときに、首相のリーダーシップや「国家戦略局」のような機構の問題だけではなくて、官僚に焦点を当てる必要があるのではないか、ということを感じていたので、そういう点で本書は意義があるかな、と。

政治主導―官僚制を問いなおす (ちくま新書)

政治主導―官僚制を問いなおす (ちくま新書)

②で、さらに勢いに乗って読んだのがこれ。いくつか勉強になる章や授業のネタにできそうな章がありました。

「政治主導」の教訓: 政権交代は何をもたらしたのか

「政治主導」の教訓: 政権交代は何をもたらしたのか

本格化

 連休明け。

 某研究会で大阪に行って仕事後に少し食いだおれたり、帰省したり、某原稿の修正に取り組んだりしているうちに連休は終わりました。

 なんだかんだと言って4月中は、たとえばゼミでは自己紹介と報告者決定だけで終わったり、講義ではイントロ的な話で終わったりと、少しゆるゆるとスタートしている間に連休に入ってしまい、連休明けの今週から、いよいよ本格化してきた感じです。

 というわけで、今日は報告・議論を行うゼミの第1回。今年は人数の関係もあり、いきなり新規の3年生から報告を当てたので、やや不安な部分もありましたが(その報告担当者はもっと不安だったでしょうが)、なかなか良い報告だったので、順調な滑り出し。今年も活発なゼミになりそうな予感です。

 さて、恒例の書評も今日からスタート。僕が紹介したのは以下の2冊。

①第10章だけはゼミのテキストにしましたが、他の部分も含めて学生に紹介。あまりそのデモクラシー論を読んだことのない著者の章(例えば、4章とか5章とか)の議論が特に新鮮で面白かったです。もちろんその他の章もデモクラシー論の第一人者ぞろいで、勉強になりました。確かに、あるようでなかった1冊に仕上がっていると思います。

アクセスデモクラシー論 (新アクセス・シリーズ)

アクセスデモクラシー論 (新アクセス・シリーズ)

②新書が出るたびに、読んでしまう著者の一人。政権交代直後、やはり山口先生の『政権交代論』をゼミで読んでいるときに、学生に「民主党政権はうまくいきますか?」と聞かれて、「93年との共通性を強く感じる(政策理念よりも統治機構改革で結びついている点が念頭にあった)ので、あまりうまくいかないんじゃないかな」と答えたことを思い出しました。 

政権交代とは何だったのか (岩波新書)

政権交代とは何だったのか (岩波新書)

 さて、今週は続々と講義・ゼミ(大学院含む)が本格化していきます。楽しみな気分とともに、また始まるなあ大変だなあという思いも。