新年ダッシュ

 あけましておめでとうございます。毎年のことですが、新年早々、原稿の仕上げや校正や事務仕事など、さまざまなお仕事に追いまくられ、ダッシュをかけざるを得ない状況になっております。年末にもう少しいろいろ進めておくべきでした…と、今になって言っても、後の祭りですが。

 ということで、今年のことをじっくり考える余裕もなくなっているわけですが、とりあえず以下のことを、今年の目標にしたいなと。

 ・いま進めている研究(社会民主主義政党の路線転換の比較研究)をもう一歩進め、最終的にまとめる展望を見出す。

 ・と同時に、次に取り組むべき(大きな)研究テーマを具体化する。

 ・近々予定されている研究棟の耐震改修に伴う研究室からの退避に向け、研究室のものを減らす。

 …といったことでしょうか。

 さて、授業の方も開始されております。そろそろ就職活動に伴う欠席も目立つようになってきました。恒例のゼミ書評では、以下の2冊を紹介しております。両方とも、関心を持つゼミ生がいるテーマなので、ゼミで強く推薦しました。

 1.2012年最後に読んだ本。中北さんの本は、いつも読むのを楽しみにしているので、今回もさっそく読みました。90年代以降の日本の政党デモクラシーの変遷について、説得的な議論が展開されていると思います。

現代日本の政党デモクラシー (岩波新書)

現代日本の政党デモクラシー (岩波新書)

 2.2013年最初に読んだ本(著者の木寺さんにいただきました:ありがとうございます)。「アイディアの政治」が精緻化されているとともに、ともすればその実証性を問われる「アイディア」の機能を、比較の手法で明らかにしようとした点が良いと思います。また、「地方分権改革」を超えた制度変化への理論的含意が読み取れる点も、僕が好きなタイプの議論でした。あとがきも力が入っていますね。

地方分権改革の政治学 --制度・アイディア・官僚制

地方分権改革の政治学 --制度・アイディア・官僚制

今年の3冊+1冊

 帰省の日は迫るが、仕事は終わっていない…。指導している修士論文(年明け締め切り)の添削はもちろん、年内に原稿(書評)を一つ書き上げたいところなのだけど。帰省にパソコン持っていく事態は避けたい!

 そうこうしているうちに、新たに校正も届いたり。まあこれは年明けに回すしかなさそうですが…。どうも編集者の人というのは、お正月やお盆やゴールデンウィーク直前に校正を送ってきて、締め切りをその直後に設定する傾向があるような気がする…というのは被害妄想でしょうか(笑)。自分が休んでいる間に、こちらに仕事をさせておこうとか考えているわけではないと思いますが(苦笑)。

 さて、おそらく今年最後の更新になると思いますので、今年読んだ本の中で、特に印象に残った3冊を。

(1)政治理論・思想部門
問題の立て方が素晴らしい1冊。

ハンス=ゲオルグ・ガーダマーの政治哲学―解釈学的政治理論の地平

ハンス=ゲオルグ・ガーダマーの政治哲学―解釈学的政治理論の地平

(2)現代政治部門
これはこちらでも何度か紹介しましたね。

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

(3)新書部門
こちらも紹介済み。1月のゼミのテキストになりました。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

(番外)小説部門
今年出た本ではないですが、今年読んだ本の中で、ということで。小説は基本的に文庫しか買わないし、ハードカバーは図書館でしか借りないことにしているので、新刊はあまり読めません。で、今年一番印象に残った小説は、

小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

 では、よいお年を。 

いろいろ片付いたが・・・

 採点などをしているうちに、あっという間に秋休みは終わり、3学期に突入。とはいえ、今年は3学期が一番授業コマ数が減る形で時間割を組んだので、例年よりは良いかも。
 また、夏以来取り組んでいた論文もようやくと脱稿し、また次の原稿締め切りまではやや時間があるので、ここのところ読みたくても読めなかった重厚な文献などにじっくり取り組みながら、幅を広げようとしているところです。

 とはいえ、当初夢想していたほどには、思い通りに時間が取れないのも現状。やはり悩まされ続けているのは来年度からのカリキュラム編成(委員なので)。2学期制へ向けて時間割などはすべて決まり、今度は便覧の作成作業ですが、来年度へ向けてカリキュラム編成がすべてオンライン上で行われることになったので、一から入力作業(これまではエクセルで修正部分を直すだけだった)。しかもこのシステムがなかなかアレなので、入力や設定に四苦八苦。若干腹を立てながら管理者にメールで質問したりすると、返事が返ってきてたのが午前二時だったりして、管理者も大変なんだなあと。ほんとこれ、誰得なんだろうか。

 そんな中、ゼミも再開。3学期はとりあえず4年生の卒論報告から開始です。4年生は卒論が佳境、3年生は就活が始まったということで、ゼミ書評の提出率が悪くなりつつありますが、僕が今回紹介したのは以下の2冊。

(1)この著者としては画期的にわかりやすい本ですが、そんな中にもらしさが随所に出ている本だと思います。政治不信から始まって、「政治とは何か?」という根本的な議論へと掘り下げながら、さらに彼ならではの議論を展開していく点は、やはりすごい。今年度最後のゼミテキスト候補の一つにしました。

政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方

政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方

(2)こちらも僕が好きなタイプの議論です。ある理論の問題点を指摘しつつ、しかしそれをもってその理論を否定するのではなく、それに陥らないための条件を探っていくという志向。特に1・2・5章が面白かったです。特に1章は来年度のテキスト候補にしようかなあ(でもちょっと難しいか?)などと。

熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

 さて、今週末は衆院選ですね。久々にゼミで議席数予想をすることになり、「今回は難しいぞ〜」とか学生に言っていたのですが、結局それほど難しくないような気も(まだやっていないけど)。

一段落?

 予定の博士論文はすべて予備審査し終えたと思ったとたんに、新たにもう一本降ってきたり、来年度から始まる2学期制へ向けたカリキュラム編成にめどが立ったと思ったら、新たな(カリキュラム関係の)文書作成の命が下ったり、なかなか「一段落」が来ないまま、だらだらと忙しい日々が続いておりました。

 ただ、それらもある程度片付き、昨日締め切りの論文もとりあえず提出し、そして3学期制の我が大学はこれから秋休み(1週間だけ)に突入!ということで、諸々の面でいよいよ一段落を迎えそうな感じか?

 …と思ったとたん、別の共著本の校正が届いていたりするんですけどね(苦笑)。

 そんな中、11月11日(日)には、東京のH大学のTさんのゼミとの合同ゼミ。すっかり毎年恒例イベントとして定着化した合同ゼミですが、今年のテーマは「首相公選制」でした。①首相公選制②(議院内閣制下での)二大政党制③多党制の3グループに分かれ、事前準備したプレゼンをもとに、討論会。

 「(両大学入り乱れて)3グループに分かれて討論する」というのは、この合同ゼミの第1回目からの手法を踏襲しているのですが、結構面白いです。どれとどれの対立がメインになるかというところから戦いが始まっており、それに負けたグループは、議論自体になかなか参入できなくなってしまうからです。

今回は、②二大政党制と③多党制が主に議論空間を支配したのち、最終的には②の勝利(審判は教員がするのですが)。勝ったグループには、ささやかな商品として、その後の懇親会で、デザート一品が追加されました。

 「そちらのゼミ生は、年々進歩していますね」と、Tさんから評価されたことがうれしかったです。

 さて、通常のゼミの方では、恒例のゼミ書評も。僕が紹介したのは、以下の2冊です。

 ①二大政党制として(特に日本から)モデル視されているイギリスでは、実際その二大政党制が揺らいでいるということで、合同ゼミでも「多党制」グループの根拠として使われいた本書。質問を受けることの多い「本場のマニフェスト」についての記述もあり、イギリス政治研究者としては便利な本でもあります。

 ②民主化論など比較政治の枠組の中に位置付けながら、中国政治を議論するという点で、中国の専門家でなくても興味深く読める本だと思います。
現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

 

非読書の秋

 「読書の秋」と言いますが、僕の場合は、どうもこの時期が一番読書ができないようです。ここ数年、某アプリを用いて、いつどんな本を読み終わったかを記録していますが、毎年10月の冊数が一番少ない。

 10月は、大学院入試や来年度のカリキュラム編成なども始まり、何の委員をやっていても学内行政的に忙しくなることや、某書類の執筆(今年はありませんが)などに忙殺されることが要因として推定されますが、やはり一番の理由は、10月から博士論文の予備審査が始まるということでしょう。だから文章ばっかり読んでいる感じなのに、本は読めないという。

 しかし10月も終わり、今年もいくつか予備審査を終えたので、あとはいま書いている論文が書き終われば、いよいよ読書の秋到来か(体感的にはもう冬ですが)?

 さて、ゼミ書評。そんなわけであまり読めていないため(しかも読んだものはどれもいまいちだった)、夏休みころに読んで面白かったものをピックアップ。

 ①前にもここで取り上げました。「光」と「影」をそれぞれ描くだけでなく、それが交差していくという展開が素晴らしいと思います。また、すべてオランダの話なのに、日本に向けたメッセージが感じ取れるところもよいです。

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

 ②経済学のことはよくわかりませんが、「確かに」と思われる部分が多数あり、とても面白かったです。ただ同時に、政治学者としては、本書で書かれている方向に向かうことの難しさもまた感じてしまう1冊です。

成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか (岩波新書)

成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか (岩波新書)

 ゼミ報告も順調に進行中。扱った&扱う予定の文献は以下の通りです。どちらもゼミ生が自分で選んだものです。

首相政治の制度分析- 現代日本政治の権力基盤形成 (叢書 「21世紀の国際環境と日本」)

首相政治の制度分析- 現代日本政治の権力基盤形成 (叢書 「21世紀の国際環境と日本」)

秋の出張シリーズ

 秋は出張が多い季節ということで、9月下旬の京都に続き、10月の連休は学会のため福岡へ行っていました。福岡は(というか九州上陸自体が)初めて。あまり行ったことのない場所へ学会で行くと、とにかくその土地のものを食べてこようというのが、最近の僕の傾向となっております。今回も、博多ラーメンなどを食してきましたが、一番おいしいと思ったのは「胡麻鯖」でした。また、大好きな「博多通りもん」も、しっかり10個入りを買って帰路に。
 
 もちろん、学会自体も真面目に参加してきております。以前から関心のある「熟議と代表制」との関係や、「アカウンタビリティ」、そしてもう少し大きく「政治と経済との関係」について、考える機会を与えてもらい、いろいろ刺激を受けて帰ってきました。

 さて、戻ってくるとさっそく学部ゼミ。恒例のゼミ書評で僕が取り上げたのは以下の2冊でした。

 ①いつも分厚いなあ、というのが第一印象ですが、その理由は小熊さんがとても丁寧な議論をする方だからなんだろうな、というのが本書の印象。「教員」としては、こういった、政治を議会や政党などに限定しない考え方について知ってもらうためにぜひ学生には読んでもらいたいという感想を持つとともに、「研究者」としては、こういう状況だからこそ議会制や政党についても諦めず考えてみたいというエネルギーもいただいた1冊です。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

 ②こちらは夏休み中に読んだ本として既に紹介済みです。イタリアの現状がわかるだけでなく、それを「パーソナル・パーティ」といった抽象概念、さらにはウェーバーの議論などとも結びつけていくその奥深さが、面白いと思った理由です。

政党支配の終焉―カリスマなき指導者の時代 (サピエンティア)

政党支配の終焉―カリスマなき指導者の時代 (サピエンティア)

 ゼミ生のテキスト報告も順調に進んでいます。

 今週のテキストは

国際移民の時代[第4版]

国際移民の時代[第4版]

 来週はこちら
国境を越える政策実験・EU (政治空間の変容と政策革新)

国境を越える政策実験・EU (政治空間の変容と政策革新)

 いずれも、一部の章を扱います(扱いました)。

 しかし、10月は油断しているとすぐに忙しくなる恐ろしい月でもあります。今年も、油断していたわけではないですが、相当ハードな月になりそうです。

秋の気配

 ようやく涼しくなってきて、研究などには良い季節になっているように思いますが、どうもここ数年、この季節に鼻炎を発症するように…。温度変化のせいだと思ってはいますが、花粉症説も(ちなみに、目も微妙にかゆい)。

 秋は出張が多くなる時期でもありますが、先週末には恒例のイギリス政治研究会へ。今回は報告者ということで、労働党の理念・組織・変化をテーマに、現在の状況などについて発表してきました。順番が3番目(4人中)だったので、参加者の皆さんのエンジンがフル回転しだしたころでもあり、いろいろなご意見を頂戴しました。この研究会で進行中の企画(そのための発表だった)にはもちろん、自分自身の研究テーマに関しても、いろいろ有益なサジェスチョンを得た感じがします。

 さて、学部ゼミの方では、4年生の卒業論文中間報告を終え、3年生の「自分の研究テーマに関し、重要な文献を選んで報告する」シリーズに入りました。順次テキストは決まっていきますが、とりあえず今週と来週はこれです。

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

道州制 (ちくま新書)

道州制 (ちくま新書)

 地方分権系は、僕自身はあまり得意ではない領域ではあるのですが(苦笑)、ゼミ生からは毎年必ず出るテーマで、今年もそこからスタート。

 また、恒例のゼミ書評も。僕は以下の2冊を紹介。

①「ある視点から一貫して書く」ということの、とても良いお手本になる1冊で、ぜひゼミ生に読ませてみたい。また、「迂遠にも思えるこの作業を欠く限り、…学術的な分析が深まらないばかりか日本政治が大きな課題に直面するたび、ポイントを外した批判とそれによる時間や人的資源の不毛な浪費が繰り返されることになりかねない」といった姿勢、また比較政治や外国政治を専門とするものが日本政治を論じる意味など、いろいろな点で共感。

首相政治の制度分析- 現代日本政治の権力基盤形成 (叢書 「21世紀の国際環境と日本」)

首相政治の制度分析- 現代日本政治の権力基盤形成 (叢書 「21世紀の国際環境と日本」)

②こちらは、「面白い」という評判を聞いて読んでみました。労農派vs講座派とか、いろいろ懐かしさも(いや、もちろんリアルタイムではないですが、学部生・院生時代とかにその辺も勉強したので)。

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)